IT企業のアステリア、秋田RPA協会/秋田ワーケーション推進協会の支援で、男鹿市にてワーケーションを実施!(後編)

2022年11月7日から10日まで、IT企業のアステリア(本社:東京都)が、秋田県男鹿市でワーケーションを実施した。同社は、DX関連事業を中心に展開しているが、ワーケーションにも積極的だ。今回の取り組みは、秋田RPA協会と秋田ワーケーション推進協会の後援のもとで実施された。前編では、タイムスケジュールに沿って3日4日の日程を概観した。後編では、2日目の夜に開催された、男鹿市の自治体職員や地元経営者とのワーケーション・ワークショップ「男鹿はどうなっている、どうできるか?」の模様をお伝えする。

●IT企業のアステリアがワーケーションに積極的な理由

本稿では、ワーケーション2日目の夜にTomosu cafeで開催された、地域事業者との交流会の模様をピックアップして報告する【★写真1】。

【★写真1】地域交流会とワークショップの模様。地域活性化のキーマンといえる若手起業家と男鹿市職員らが駆け付け、男鹿の現状と課題について語り合った。

今回の交流会は、アステリアのワーケーション・リーダーを務める松浦真弓氏と、秋田ワーケーション推進協会の伊嶋謙二氏がモデレータを務めた【★写真2】、宿泊地でのテレワークや地域社会との交流などをテーマに、地元経営者とのワークショップが行われた。

【★写真2】秋田ワーケーション推進協会 伊嶋謙二氏(写真手前)、アステリア 松浦真弓氏(写真奥)。

アステリアは、創業当初から企業システムを「つなぐ」ためのミドルウェア「ASTERIA Warp」を投入しており、そのなかで最近話題になっているノーコードツールをいち早く提供してきた。Platio (https://plat.io/ja/)は、スマートフォンなどのモバイルアプリをプログラミング知識なしで誰でも作れるツールで、日報、チェック、情報共有といったシーンで企業や自治体自身の手で開発して活用できるものだ。

松浦氏は、アステリアとは、どのようなIT企業なのか、各自の自己紹介も兼ねて説明した。

【★写真3】「今回の男鹿ワーケーションを半年かけて準備した、企画者であるアステリア株式会社ノーコード変革推進室 松浦真弓氏。全国でワーケーションを実施しているが、秋田でしかもシーエリアでの条件に男鹿が最適だったと語り、経験値もさらに高まったという。」

同社は東京の恵比寿に本社があるが、世界にも4か所の拠点があり、コロナ禍を契機に現在では約9割の社員がテレワークを行っているという。

同氏は「ワーケーションの目的は、日常業務に加えて、地域の学び、対話、文化の理解、観光などがあります。しかし我々は、それだけでなく、新しいアイデアやビジネス機会の創出、そして実証実験や協力体制の構築も考えています。社会を良くしていく活動を、ぜひ男鹿の皆さんと一緒にやっていきたい」と力説した。

今回のワーケーションは、松浦氏のほか、アステリアの開発本部で働く米国出身のNick Flower(ニック・フラワー)氏【★写真4】、財務経理部の加賀谷 正実氏【★写真5】、営業本部の毛受(めんじょう)克二氏【★写真6】が参加し、各自がワーケーションに参加した理由や男鹿の印象などについて語った。

【★写真4】アステリア 開発本部 Nick Flower(ニック・フラワー)氏。IoT関係のアプリケーションを開発している。日頃とは異なる環境で自然に触れながら仕事をしてみたかったという。

【★写真5】アステリア 財務経理部 加賀谷 正実氏。最近、秋田県横手市に移り、リモートワークで業務をこなしている。秋田県にいるが、近いがゆえに逆に男鹿にあまり訪れないため、今回のワーケーションに参加したそうだ。

【★写真6】名古屋から参加したアステリア 営業本部 毛受(めんじょう)克二氏。リモートワークが中心で、なかなか他の社員と出会えないため、今回のワーケーションに参加したという。

アステリアでは前出のように9割がテレワークなので、社員のコミュニケーションを図るために、こういった機会が重要と考えている社員は多いという。男鹿では民泊のような形でオモテナシを受けたり、海のさざ波を聞きながら、いつもと違う環境で働いたりと、従来とは全く異なる感覚で刺激を受けた。

男鹿ワーケーションの仕掛け人で、男鹿出身の伊嶋氏は「アステリアさんと男鹿市をつないで、このワーケーションができたことはとても意義深いです。今回も仕事をする場所として、秋田県そして男鹿市を選んでもらえて光栄です」と語った。

●かなり厳しい! 人口と財政からみる男鹿市の現状と課題

続いて「いま男鹿はどうなっているのか?」というテーマで、参加者に現状の認識が共有された。男鹿市役所からは、企画政策課の三浦大作氏、伊藤 瞳氏、戸島 類氏、秋田県産業集積課の加藤丈晶氏、男鹿市地域おこし協力隊の吉岡利那氏らが参加。代表して三浦氏が、市の人口動態や経済指標などの市勢情報を発表した【★写真7】。

【★写真7】男鹿市 企画政策課 三浦大作氏。生まれも育ちも男鹿市で、男鹿市の変化を目の当たりにしてきたが、こよなく地元を愛しているという。

男鹿市にとっての最大の課題は人口減少だ。1955年に5万9955人ほどでピークを迎えたが、その後は減少の一途をたどり、2015年には2万8375人に半減、現在は2万4904人になっている。年齢別にみると、生産年齢にあたる15~64歳までが1万4492人で51.1%、65歳以上の老年人口は1万1664人で41.1%だ。

三浦氏は「老齢人口の割合は1995年に21.5%でした。20年間で約2倍になり、急速に老齢化が進んでいます。この傾向は今後も続くでしょう。さらに2040年には現在の人口が半分にまで減ると予想されています。移住と定住の対策が急務になっています」と危機感を露わにする。

人口減少の原因は、秋田県内で最も低い合計出生率、未婚率の高さ、進学・就職に起因する転出の3つが挙げられる。さまざまな課題があるなかで、その対策として結婚支援や、子育ての環境整備、移住・定住の促進が重要だという。

「人口減少の問題を解決するための1つの施策として、まずは交流人口を増やすべく、今年度から、なまはげの里・男鹿ワーケーション補助金を創設しました」(三浦氏)。

次に、男鹿市の財政状況だが、令和3年度の一般会計は歳入が184億2808万9000円、歳出が179億7418万2000円。繰越金もあるが、前年度の税制調整基金(貯金)を取り崩しているため、なんとか切り詰めながら運営している状況だ。人口が減少する中で、だんだん税金も減ってくるため、ふるさと納税にも取り組んでいる。

三浦氏は「また過去のインフラの老朽化にともなう維持管理も、先手を打って整備していかなければなりません。災害などの不測の事態に備えた蓄えも必要です。人口減少も踏まえながら、将来の負担を残すような借入金を増やさないことも大切です。収支をみながら、健全な財政運営が図られるように頑張っています」と強調した。

●同じ志を持つ仲間と、男鹿の未来に貢献する活動を始めた若手起業家たち

このような男鹿市の厳しい背景を踏まえて、ワークショップでは「いま男鹿をどうすべきなのか?」「男鹿市をどうしたいのか?」というテーマで、地元で活躍している若手起業家の方々が発言した。船木一人氏【★写真8】は、東京でアパレル関係の仕事をしていたが、地元に戻って、いまは洋服屋を経営しているそうだ。

【★写真8】子供のころから、男鹿には何もないので都会に行けと言われていたが、東京に出てから故郷の良さを再認識してUターンを決意したという。

船木氏は「船川周辺を活性化するために、船川ひのめ市やひのめ商店を開催していましたが
https://www.facebook.com/funakawa.hinomeichi/)、さらに日常的に交流の場を広げるために、仲間3名と出資して、このTomosu cafeを2020年に作りました。最近ではSNSなどを通じて、若い人たちが移住してくれるようになってきました。しかし、自分たちが男鹿をどれだけ楽しめているのかという点が重要です。男鹿をフィールドにして、どれだけ遊び倒せるのか、地元の未来を次世代の子供たちに示さなければなりません。いま男鹿に仕事がないのならば、仕事をつくればよいのです」と力説した。

続いて、創業104年という長い歴史があり、お肉と総菜の店・フクシマの4代目となる福島智哉氏【★写真9】が発言した。小学生の頃から男鹿市に対して問題意識を持っていた子供だったという福島氏。

★写真9】福島智哉氏も東京からのUターン組。家業のお肉と総菜の店・フクシマは、大変美味しいと地元で評判。交流会の素晴らしいオードブルは、彼が腕を振るって作ってくれたものだ。

同氏は「東京の大学に入学して、東京で就職しましたたが、やはり男鹿の良さを再確認し、家業を継ぐために13年前にUターンしました。その後,東日本大震災を経験し、同じ志を持つ仲間と出会い、地域に貢献する活動を始めました」と地域活性化の取り組みについて説明する。

一方、稲とアガベ株式会社の齋藤翔太氏【★写真10】は、地元出身ではなく、今年4月に男鹿に移住してきた。前職は政府系の金融機関に勤めていたが、2014年から秋田市に住み、そのときに稲とアガベのことを知り、全国を転勤したのち現在に至っている。

【★写真10】酒造りと地域活性化に注力している稲とアガベ株式会社 齋藤翔太 氏。稲とアガベは、旧男鹿駅をリフォームした場所に酒蔵と販売所があり、見学もできるという。

「もともと秋田にいた頃から、海と山がある男鹿が好きで、酒造りをコアにした街づくりを目指していきたいと思っていました。男鹿には自然や文化など良いリソースがあるのに勿体ないので、リピータや定着のお手伝いができればと考えています」と斎藤氏。

秋田出身の福留純枝氏【★写真11】は、ワーケーションがどんなものか、受け入れ側としてどうすればよいのかという点を知りたくて、この会合に駆けつけたそうだ。前編で紹介した「なまはげ館」の中にある「里ぐらし体験塾」で、わら細工などのモノづくりをレクチャーしている。また民家をリフォームした「ノラネコ舎」にて、仕事の合間にパン作りをして販売しているそうだ。「ある意味では、男鹿は何もないところかもしれません。しかし何もないからこそ、逆に何でもできるし、お店をやっても周りの人が協力してくれます」と男鹿の良さをアピールした。

【★写真11】「なまはげ館」の「里ぐらし体験塾」でレクチャーしたり、「ノラネコ舎」にて不定期開催でパン屋をオープンしているという。

●男鹿のリボーンは、これからが本番! 若い力による男鹿の変革に期待

最後に、今回の男鹿ワーケーションに参加した筆者の感想を述べて、本稿のまとめとしたい【写真12】。

【★写真12】今回のワークショップの様子をわかりやすく紹介したグラレコ(by 中野友香 通称:moka)

個人的な感想を正直にいうと、男鹿の再生への道は厳しいものがあるように感じる。駅の周りには、古びたビジネスホテルや廃業になった店も散見され、寂れた場末の地方都市感が強いのも事実だ。しかし、その一方で男鹿駅が新しくリニューアルされ、それに合わせて駅周辺に「道の駅・オガーレ」や、前出の稲とアガベのような新興企業も参入し、再生へ向けた取り組みも活発化している。来年はワーケーション用コワーキングスペースも駅前にできる予定だ。

もともと男鹿は海と山の自然に囲まれ、景勝地も多くある。ユネスコ無形文化遺産に選ばれたなまはげの珍しい伝承文化も息づいている。そういった観光リソースを活用すれば、アステリアのようなIT企業もワーケーションに数多く訪れるようになるだろう。また、今回のワーケーションに参加した Nick Flower氏は「仕事だけでなく、地域としての男鹿の魅力を大いに感じたので、再訪問したいです」とも語った。外国人にとって、まだ男鹿の知名度は高くないが、彼の反応を見ても、今後のプロモーションの方法によっては十分にインバウンドを呼び込めるポテンシャルがあると思われる。

ワーケーションや観光も含めて、男鹿をリボーンするためには、受け入れ側である地域住民の意識も大切なことは言うまでもない。幸いにも今回の交流会で、30代~40代の志ある起業家が地元に多くいることも分かり、本当に心強く感じた。伊嶋氏が事務局長を務める秋田ワーケーション推進協会や創生する未来(https://souseimirai.jp/)といった民間団体、アステリアのような多くのIT企業、そして何よりも男鹿市の職員の方々と、地元をこよなく愛する男鹿市民の力を集結し、官民一丸となって男鹿が地方再生を進め、元気な地方都市のモデルケースになってくれることを願ってやまない。

後援:秋田ワーケーション推進協会
https://workation.akita.jp
一般社団法人 秋田RPA協会
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監修:創生する未来
執筆:井上猛雄